やりたいことをやるつもり

なんでもかんでも記録する。

海外現地調査のすゝめ(イギリス編)

※これはklis Advent Calendar 2019 12/20の記事です。

adventar.org

 

主催者に従い、自己紹介をしておきます。

klis14で平凡に卒業し、slis18になり、来年度そのままslisD進予定のういういです。

何の理由もなく、心が公共図書館に惹かれてしまったので、公共図書館の研究をしています。

 

私は2017年度にやった卒業論文、今現在進行形でひいひい言ってる修士論文のどちらもイギリス(ロンドン)で現地調査をしました。

卒論の時はklis/slisの「海外研修助成制度」を使い、今年は自費で行ってきました。

海外の図書館をテーマに研究したい人の参考になればいいなーというお話を書きます。

 

他の方々よりお堅めの内容&長いので目次を確認して、必要なところだけお読みください。

 

【目次】

1.海外研修助成制度ってなに?

2.実際どのくらい(お金・時間・労力)かかるの?

3.それほんとに海外行かなきゃだめ?

4.現地調査って実際どうやるの?

5.旅行にも使えるロンドン小話(個人の感想)

6.まとめ

 

1.海外研修助成制度ってなに?

図書館情報メディア研究科及び知識情報・図書館学類の学生が対象の助成事業で、海外での研修(現地調査とか)を支援してくれる制度です。

海外であれば場所は問わず、航空費+宿泊費で最大20万円まで支援していただけます。

私の時はklisとmastの学類長の前で、研修計画のプレゼンと質疑応答をして、6人くらいの中から3人が選ばれました。

学類~院まで含めて1回しか使えない(慣例上?)そうなので、使いどころは考えたほうが良いかもしれません。

あと、いくつか注意点はあります。

・後払い:先に自分で払っておいて、後で使った分振り込まれます。帰ってきて、2~6ヶ月ほどかかります。私の場合、9月に行って、返ってきたのは確か1月か2月。

・書類めっちゃ面倒:飛行機とホテルの領収書、出張届、旅程表、報告書、くらいは最低でも出す必要があります。OSSMAの加入必須だったりとか。

・HPに名前が出る:対象に選ばれると学類と研究科の該当ページに名前が出ます。報告書も載ります。嫌な人は注意。

 

ただ、大学のお金で海外行けるのめっちゃいいぞ。

海外で現地調査したい人は検討すべき支援だと思います。書類もなんだかんだ支援室の人がちゃんと教えてくれます。

詳細は必ずその年度ごとの応募要項とかを確認してください

該当ページ↓

klis.tsukuba.ac.jp

2.実際どのくらい(お金・時間・労力)かかるの?

2.1 ヨーロッパならやっぱり20万前後

 私の場合、1回目も2回目も2週間ほど滞在して、1回目は30万程度、2回目は20万程度でした。大体航空費が8~15万くらい、宿泊費が5万~かかります。

 旅行であれば航空費はセールを狙ったり、宿泊をドミトリーにしてもっと安く抑えることもできます。ただ、調査に行くのであれば時期が固定される(大体夏休みか春休みに行く)し、宿泊先にWifiと机がないと話にならん&可能なら一人で安心して眠れる環境が欲しいのでこのくらいかかります。

 そこに生活費を足して20~30万円です。

 1回目は旅行代理店を通したこと、安いけどちゃんとホテルに泊まったことで30万円程度。2回目は個人手配したこと、一人部屋だけど1階に家主が住んでるB&Bにしたことで20万円程度、といった感じです。

 

2.2 代理店手配 vs 個人手配

私は1回目(卒論)は代理店手配、2回目(修論)は個人手配で行きました。

代理店は大学会館のとこにある某旅行代理店で、個人手配ではExpediaを使いました。

前者は近いから、後者はホテルと飛行機をまとめて手配できて、まとめて手配するとホテルが若干安くなったから、という理由で選びました。

それぞれの利点と欠点をまとめておきますね。

 

代理店手配

<利点>

・飛行機等で遅れやバゲージロストがあっても安心

・領収書その他を何も言わなくても出してくれる

・乗り換え時のホテルなども探してもらえる

・旅行保険もまとめて手配してもらえる

・旅行などで使うならツアーとかの手配も任せられる

<欠点>

・手数料が入るため少し高くなる

・旅行代理店では手配できないホテルがある(安いホテルが少ない?)

・1,2回は実店舗に行く必要がある

 

個人手配

<利点>

・安く手配できる

・店舗に行かずに24時間手配ができる

・個人経営のB&Bやドミトリーもホテルの候補に入れられる

・好きな旅行保険を選べる

<欠点>

・飛行機が遅れようがバゲージロストしようがホテルの予約に手違いがあろうが、戦うのは自分

・旅行保険、ホテルまでの交通手段など自分で手配するものが意外と多い

・書類とか必要なものを自分で揃えるの大変

 

以上より、個人的には海外が初めての人、度胸がない人、お金がある人は旅行代理店にお願いしたほうがよいよ!って感じです。

バゲージロストや飛行機の遅延は、プランを選べば旅行保険でカバーできます。加えて、日本語オペレーターに繋げるサービスがついてたりします。

語学力と気合いで大体乗りきれるぜ!という人は個人手配安いし楽しいのでおすすめ。

 

3.それほんとに海外行かなきゃだめ?

3.1 現地調査しなくても論文は書ける

 ぶっちゃけた話をすると、日本を対象にしようが海外を対象にしようが、現地調査無しで論文は書けます

 文献調査のみでもいいし、アンケートでもいいし。もし相手の都合がつくならSkypeなんかを使ってオンラインインタビューでも可能です。十分研究方法として認められます(それが研究目的に適しているなら)。

 今は現地に行かなくても色んな情報が手に入ります。海外に行く余裕はないけど海外の何かしらについて研究したい、という人は安心してください。

 

 それでも現地に行くのはなぜか?と問われると、私の中では3つ回答があります。

 ①現地に行かないとわからない様相があるから、②現地に行く方が職員さんが優しいから、③次年度以降に繋がるから、です。

 ①その図書館にいる人々の年齢層、人種、性別の割合。職員と利用者のコミュニケーションの様子。その地域の活気や雰囲気、あと匂いも。それを知っているのと知らないのとで書ける内容や考察の深みが全然違います。

それから、その図書館だけでなく、周囲の別の図書館、別の地域の図書館を回ることで、調査対象の図書館の事象が、その図書館特有なのか、その地域・国特有なのか、といったことが分かります。

 ②逆の立場で考えてもわかると思うんですが、はるばる海を越えてやってきて「あなたの図書館に興味があります!」という人には協力したくなります。行くから!というと受けてもらえるインタビューも多いはず。時間の調整も楽だしね。ネットに上がってない資料をくれたりもします。

 ③一度会った職員さんは、とりあえず「顔見知り」になります。調査の時印象良くできればお友達になれるかも。そしたら来年度以降職員さんにインタビューしたいとか利用者さんにもお話聞きたい、というときに協力してくださる可能性が高まります。私は今年図書館の人と仲良くなってクマさんをもらいました。

 

3.2 研究の名目で海外に滞在するのめっちゃ良いよ

 調査以外は海外旅行だ!!大学のお金で行ける可能性もある!!

 普通の旅行だとしり込みする2週間が「調査だから」というと必要日数になる!!

 「旅行した」だと「いいなー」で終わるけど「海外で現地調査してきた」だと「すごーい」ってなる!!

 論文のクオリティはともかくとして「私は現地調査を乗り越えたのだ」っていう自信がつく!!最終発表全然怖くない!!

 

4.現地調査って実際どうやるの?

4.1 アポとり

 私は行く前にひたすらメールでアポを取りました。図書館のアドレスに「日本の大学生です。~~という研究をしていて、貴方の図書館に大変興味があります。×月●日から×月△日まで、ロンドンに滞在するので、インタビュー/参与観察させてくれませんか」と送ります。

 どこでもそうですが、相手の優しさ次第です。受けてくださった職員さん、本当にありがとうございます。

 とりあえずメールで取れるだけアポを取って、行った先では回った図書館で面白そうなところがあれば「来週もう一回来るからインタビューさせてもらえませんか?」とお願いします。「私では判断できない」と言われたら判断できる立場の人の連絡先だけもらって帰り、メールを送ります。大事なのは折れない心。

 

4.2 準備

 アポを取る前から質問項目は準備し始めていました。これは研究内容によると思うので、指導教員とよくよく相談して決めてください。

 参与観察にしてもインタビューにしても倫理申請が必要です。渡航する前に必ず出すこと。結果が出るまで大体1~2週間かかるので、早め早めに動きましょう。

 アポが取れたら、その図書館の資料をひたすら集めます。文献で分かることは訊かないようにしましょう。文献を読んでわからないことはどんどん訊きましょう。自分の研究にどういう資料が必要で、ネットで手に入れられるものがどれで、手に入らないものがどれか把握しておきましょう。

 事前に一回訪問して場所と交通手段を把握しておくとよいと思います。

 持ち物はバインダー(レポート用紙を大量に挟む)、クリアファイル、鉛筆、デジカメ、ICレコーダー、菓子折り。

 スマホは充電切れが怖いのと、相手の理解が得られるかどうかが難しいので、デジカメとICレコーダーにしたほうが無難です。一応スマホをサブとして使えるように録音アプリは入れておいた方がよいです。

 菓子折りは無難なクッキーとかオススメ。お礼の気持ちでもあるし、相手からの好感度を上げておくとインタビューの内容やもらえる資料が変わってきたりします。

 

4.3 そして調査当日

 インタビュー/参与観察中は同意を得て録音を取りつつ、ひたすらメモをします。話の内容、それに関して自分がひらめいたことなどなど。調査の日付と時間は必ず書きましょう。

 どんなに緊張していようが、にこにこしているのが大事です。

 終わったらお礼のメールを忘れずに。

 録音や写真のデータはすぐにバックアップを取って、可能なら覚えているうちに文字起こしや記録のまとめができると良いです。

 

 アポ取りでも、インタビューや参与観察中でも大事なのは十分な準備と気合です。

 

5.旅行にも使えるロンドン小話(個人の感想)

5.1 みんな気になるご飯の話

 「イギリスに行った」という話をすると、90%くらいの確率で「ご飯まずいって本当?」と聞かれます。結論から言うと「わりとおいしい」です。

 もし同じ金額を出すとすれば、間違いなく日本の方がおいしい。ただ、物価の違いみたいなものもあるので、それなりに高いものを買えば普通に美味しいものが食べられます。

 フィッシュ&チップスは白身魚のフライとポテトなので普通においしいし、スコッチエッグも茹で玉子入りハンバーグなのでおいしいし、シェパーズパイもただの挽き肉とジャガイモのパイなのでおいしいです。スコーンも有名ですが当たり外れがあるかも。

 あとカフェとかで食べられるイングリッシュブレックファストはまじでおすすめ!!おいしくて量が多い!!

 私は内臓系が苦手なのでブラッドソーセージとハギスは食べられません。好きな人は好きかも。あとうなぎのゼリー寄せはまずいと有名ですね(食べてない)。

 安くて美味しいものが食べたい!と思ったらスーパーに行きましょう。果物とパンは間違いなく美味しいので。スモークサーモンもおすすめ!

 あとは、ロンドン歩いてるとそこら辺にエセ日本食チェーンがあるのでそれも面白いです。最近の流行りはDONとGYOZAらしい。私は毎回SUSHIを食べてます。ネタはそこそこ美味しいけど米があんまりおいしくないです。

 

5.2 ロンドンの交通網

 バスと地下鉄、以上!って感じです。タクシーも走ってますが、バスと地下鉄あればロンドン中回れるので使いませんでした。

 バスはめちゃくちゃ時間がかかるけど安い。

 地下鉄は速いけど高い、あともちろんバス停より駅が少ないので多少歩く。あとはロンドンの端の方に行くための地上鉄道もありますが、大体地下鉄と同じです。

 地下鉄もバスもOystarと呼ばれるSuica的なカードを使って乗るのが便利です。空港とか駅の券売機で購入・チャージができる&ほとんどの券売機が日本語対応です。

 地下鉄の路線図はとても分かりやすいし、改札の近くに大抵誰か(駅員か警備員)がいるので、行先の表示されたスマホを見せて「ここの駅に行きたい(I'd like to go to this station.)」と言うと教えてくれます。

 バスはまーじでわかりにくい。バス停ごとに停まるバスの路線が違うし、バス停が多すぎてわからない。個人的にはGoogle Mapよりもcity mapperというアプリの方がバス停までの案内が分かりやすかったです。

https://play.google.com/store/apps/details?id=com.citymapper.app.releaseplay.google.com

 

 バスは降りるときには降車ボタンを鳴らして知らせます。乗るときはバスが来るのが見えたときに乗りますアピール(運転手と目を合わせる、軽く手を挙げる等)をしないと素通りされることがあります。

 数日の滞在なら地下鉄のが便利ですが、長期滞在や調査で色んな所を回るのであればバスを使って交通費を押さえた方が良さそうです。

 

5.3 治安とロンドンの人々

 治安が悪い悪いと言われるヨーロッパですが、ロンドンでは暗いときに危ない場所を通らない限り、そうそう何もありません。もちろん自衛は大事なので、貴重品は肌身離さず持っておく、派手な格好はしない、変な人に声をかけられても無視する、などの対策は必要です。

 ただ、テロだけはどうしようもないので、遭わないことを祈るしかありません。私が卒論で行ったとき(2014年)、乗ってる電車と同じ路線の駅で爆発騒ぎがありました。幸い私はなんともありませんでしたが、十分注意してください。2019年に行ったときは、2014年当時より駅の警備員さんも少なくなっていました。

 あとロンドンの人はめっちゃ優しい。大きいスーツケースを引きずって階段上っていると誰かが助けてくれるし、案内板を見上げていると誰かが声をかけて案内してくれます。もしかしたら私が女の「子」に見えてるからかもしれません。

 今年行ったとき、路線図を見て乗り換えを考えているとナイスガイが声をかけてくれました。

「どこ行きたいの?」

「××って駅に行こうとしてる」

「案内してあげるからついておいで」

はぐれてないか振り向きながらホームまで案内してくれて、

「いいかい、ここのホームに2番目にくる電車に乗るんだよ。僕は違うホームだから行くけど、間違えないように気を付けるんだよ」

と噛んで言い含めるように私に言ってナイスガイは違うホームにいきました。扱いは完全に中学生でした。たぶん大抵の日本人は5~10歳くらい若く見られます。

 

5.4 覚えておくと便利なこと

・トイレはまじでない。大きい駅、図書館、美術館、博物館、デパート、スタバのが使いやすいです。カフェはあるところとないところがある&注文しないと使えない&場所が分かりにくくて店員さんに聞かなきゃいけないことが多い。見つけたら行っとけ。

・クレカはどこでも使える。1~2枚用意しておく&海外にいるときの紛失連絡先をチェックしておきましょう。マーケットとかに沢山いくならある程度現金があってもよいです。

Wifiは以外とない。時間制有料のWi-Fi、イギリスで通じる電話番号を入れないと使えないWi-Fiならたくさんあります。日本でポケットWi-Fiを借りていくのが吉。

 ・大英博物館の入り口ではバッグチェックがあります。刃物等は置いて行った方がよさそう。

 

6.まとめ

 海外現地調査楽しい!一人で自由に動けるの最高!

 あんまり怖がらずに、機会があればぜひ行ってみてください。

 質問があればここのコメントかTwitterで。