やりたいことをやるつもり

なんでもかんでも記録する。

ランダム・ウォーカーが(たぶん)完結してしまった

本当に良いシリーズだ。

ここ数年、ラノベを読む冊数は減っていて、その中で出会えたことが本当に嬉しい本だった。

 

昨年、書店のバイトを辞めてから書店に行く機会がめっきり減ってしまい、新刊が出たことに気がつかないことも増えた。

2018年の12月に出たランダム・ウォーカーの最新刊も、気づいたのは今年の11月で、読んだのは12/7になってしまった。奇しくも丁度一年だった。

 

3冊目になる『天地の狭間のランダム・ウォーカー』を読み終わって、最初に思ったことは「研究者を目指していて、ほんとうに良かった」だった。

私も、シュカやヨキやアストラのような研究者を目指せる。

私はフィールドワークが好きだ。

文献ではわからない空気や活気や、そこにいる人たちを知ることができる。

読んだこと、聞いたこと、見たものが繋がる瞬間は、それはもうびりびりきてたまらない。

私はまだ研究者の卵どころか卵の殻のカルシウムの元素くらいのレベルなんだけど、それでも目指せる。

それが本当に嬉しい。

 

さて、ちゃんと本の紹介もしておこうと思う。

空の上にある文明が超的に発達した「セントラル」は地上の全世界地図を完成させ、地上の未知を解明するために中央調査局という国家機関を設置している。

そこの調査官であるシュカとヨキが地上を歩き、未知と出会い、人と出会う物語だ。

 

この本の素敵なところは、ファンタジーと科学が絶妙に織り混ぜられているところ。

基本はファンタジーだ。たぶん。

未知の生物、未知の現象。

でもそこに科学的にあり得る(あり得そうな?)解明シーンが加えられ、「もしかしたら世界のどこかには私が知らないだけで、あるのかも」と思わせられる。

夢がある、というと陳腐な感じだが、世界が無限に広がっているような気がする本だ。

 

それから、出てくる人がいい。

みんな自分の信念があって、そこに心がきちんと向いている。

この本は基本的には短編集という形をとっている(形式としてはキノの旅とか近いかも)。ヨキとシュカとセントラルの数人以外は登場人物が毎回変わる。

たぶん私たちはセントラルではなく、地上側の人間で、セントラルから調査されたり、見張られたりする立場だ。セントラルの一部の人間からすれば見下されていると言えるのかもしれない。

それでも、それぞれの登場人物に信念があって、心があって、人生があるというのが本当に愛おしいと思う。

このシリーズ、3巻まで出ているが、一冊につき3回は泣かされた。何が悲しいというわけじゃなくて、切なくて愛おしくてよくわからないけど胸がぎゅーっとなって泣きたくなった。

そういう本に出会えるのは幸せだと思う。

 

ところが、3巻のあとがきを読んで愕然とした。

4巻が未定。しかも商業的理由。

こんな良い本が、1,2巻が売れなかったというのか!?

いや、私も図書館情報学徒の末席にいる以上、近年の出版業界の厳しさはよく知っている。

それでも、なんだかやるせない気持ちになった。

 

いつか出るかもしれない幻の4巻のため、そうでないとしても、作者が次回作を書くためのエネルギーにするため。

みんな買って読んでください。

私の2019ベストヒットと言っても過言ではない。

とりあえず1巻読んでゾッとしてほろりとしてください。

そうです、ゾッとする話もあります。

よろしくお願いします。

 

 

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

  • 作者:西 条陽
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/03/10
  • メディア: 文庫
 

 

 

天地の狭間のランダム・ウォーカー (電撃文庫)

天地の狭間のランダム・ウォーカー (電撃文庫)

  • 作者:西 条陽
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: 文庫