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吹奏楽のトラウマと吹奏楽部関係者にお願いしたいこと【後編】

さて、後編です。

 

③音楽性の違いとオーディション

バンドは音楽性の違いで解散したり脱退したりします。

でも吹奏楽部は部活なのでなかなかそういうわけにはいきません。その学校のその部の方針が全てで、そこから離れることができません。

 

もし私が楽器を持っていれば、違ったのかもしれませんが、楽器も維持費も個人でのレッスン料も高く、どうにもできません。(だってオーボエ普通に100万超えてくる)

 

私のいた吹奏楽部は「全国大会」を本気で目指すところでした。実際私が2年生のときには、夏の大会で全国までいきました。

でも、私はそうじゃなかった。楽器が吹ければそれでよかった。

そこのズレは「オーディション」という制度によって決定的になってしまいます。

 

吹奏楽の夏の大会は、出場人数が決まっています。

だから、どうしても大会には出られない二軍が発生します。

私は二軍でよかった。というよりも、二軍として楽しく楽器を吹く方がよかった。でもそれは無理でした。

私の楽器だったオーボエは、部内に大抵二人しかおらず、曲構成の都合上、二人とも出ることが求められました。

それでもオーディションは受けねばなりません。

 

うちのオーディションは、部内全ての人が後ろを向いて座ります。オーディションを受ける人は前に出て、先生に指示された箇所を吹きます。吹いたところを聞いて、「この人は大会にでても良い」と思えば後ろを向いている人は手を上げます。あげた人数によって合格・不合格が決まるのです……

 

私はこれにどうしても受からなかった。

オーボエは二人しかいないので、吹いている人がどっちかなんてすぐわかる。

誰も手をあげてくれない、特に先輩方からは手があがらない。後輩は私よりも上手くありませんでしたが、「セカンドだからこれくらいでいい」とあっという間に手が上がって合格しました。

不合格でも大会にはでなきゃならない。一軍の合奏中、合格してないのは私だけ。

先輩方には「早く先生に頼んでオーディション開いてもらって、合格しろ」

頼んだ先生には「不合格でも大会に出ることに変わりはないんだから、そんなこと言ってる暇があったら練習しろ」

二軍の人たちからは「3年生で二軍もいるのに、オーディション不合格のやつが大会に出るなんて信じられない」

八方塞がりでした。いやまじで二軍の人代わってくれって思ってた。

出ても下手くそだ、和を乱してると罵られるだけで、なんにも楽しくなかった。

 

私はオーディション不合格のまま大会にでました。

 

冬の大会も同じです。

うちは学内でソロコンテストをやって、上位の人から決められた数のグループをつくり、そのグループだけが大会に出られる仕様でした。

私はたしか、2年間(3年生は夏の大会で終わり)とも学内ソロコンテストは銀賞。

でも、1,2年ともトップグループでの大会に出ることになりました。

何故かというと、よくオーボエと「木管三重奏」グループになるフルートとクラリネットが優秀だったからです。私は銀賞でも、木管三重奏を組むときに、オーボエでは最上位だから選ばれたのです。

まあこれも妬み嫉みその他諸々ありました。プレッシャーもあったし、全国大会に行けなかったときは私が力不足で、と怒られた。あんまり上手くいきませんでした。

嫌になっちゃいますね。

 

吹奏楽部経験で私に刻まれたこと

①~③のような経験があって、私の中には「低い自己評価・自己肯定感」が刻まれました。

これは本当によくない。

 

部活時代に誉められた記憶は、大会か選抜演奏会かの審査員コメントで「オーボエの音が伸びがよく、素晴らしい」と書かれていたことだけ。先生がそれを前で読み上げたとき、部内は「シーン」としていました。「よかったね」と声をかけてもらった記憶もありません。

部活で嬉しかった記憶がこれだけってどうなの?

全国大会に行ったとき(2年生)も、「あ、この地獄まだ続くんだ」と思いました。先輩達の機嫌が良かったのが嬉しかった。

 

自己評価・自己肯定感の低さはパフォーマンスにも関わるし、人間関係の構築にも関わります。

私は幸い部外にもインターネットにも友人がいたのでなんとかなりましたが、そうじゃなかったら普通に死んでたかも、と思います。

部外で救われていた私でさえ、何か落ち込むことがあったときに「自分はクズでゴミで、死んだ方がマシな人間だ」「これは全て私の能力不足や考え方が悪い」と考える癖が残っています。

年上の人と話すとき、その人に慣れるまではおどおどしてしまいます。吹奏楽部に多かった所謂「陽キャ」と呼ばれるような人たちが苦手で、新しく出会った人がそのタイプだと、その人がどんなに良い人でも、落ち着いて話せるまでに時間がかかります。

 

高校生の頃から私の存在を全肯定してくれる人たちはいました。大学にもいます。少しずつ、分野によっては自己肯定感を高められるようになってきました。

でもこの傷やトラウマは一生ものだと思います。

 

吹奏楽部の人にお願いしたいこと

◯今、吹奏楽部の人へ

・きっと部活の空気に合わない人というのがいます。その人が辞めたいと言い出したら止めないでください。部活は部活であって、将来の進路を壊すほどの価値はありません。

・闇雲に全国大会を目指していませんか。部内で一致していますか。苦しい人はいませんか。きちんと確認して話し合ってください。そのときに、一人を囲んで「お前がこっちの考えに同意すべき」と洗脳するようなことをしてはいけません。

・音楽はとても楽しいものです。もちろん、生理的にウマが合わない人というのはいるし、それが先輩後輩かもしれません。そのとき、音楽をダシにしてその人を貶めるようなことをしないでください。音楽を自分の好き嫌いで汚さないように。

・今苦しんでいる人は、部活の外に助けを求めてください。他の先生や、外のカウンセラーや、病院に。きっと多かれ少なかれ精神的にまいってると思うので、それをなんとかできる人を探してください。学生のうちに少しでも修正できるようにしてください。

 

吹奏楽部の先生へ

・全国大会に行きたいのはほんとうに学生の意思ですか。先生の希望ではありませんか。音大ではないので、学生には勝つためだけではない音楽経験をさせてあげてください。

・苦しそうな学生がいないかよく見ていてください。パートリーダー任せにしないでください。その子の練習不足が悪いと突き放さないでください。練習をいくらしていても、仲間に入れてもらえない子だっているんです。

・部内のルールを見直してください。もちろん全ての人に合わせるルールは不可能です。人がルールに合わせるべきだとは思います。ただ、不要なルールで苦しむ人がいないようにしてください。

 

 

私は大学に来て、大丈夫だと分かっていても人間関係が怖くて吹奏楽をやめました。オーボエ吹奏楽曲も、今でも大好きですが、吹奏楽の演奏を聴くと胸と息が苦しくなります。オーボエの音色を聴くと泣きそうになります。オーボエを吹いている人を見ると嫉妬もします。

それでも、こんなに好きでも、もう触りたくないとも思います。

 

もちろん全国大会目指して頑張るのは、とても素晴らしいことです。

ただ、これ以上、吹奏楽の人口を減らすようなことが、吹奏楽部で起こらないことを祈っています。